かぜ・そら・とりのブログ

気ままに、のんびり。

海獣、プラスチック、そしてトング

海獣学者、クジラを解剖する。」(田島木綿子 著)を読んだ。海獣というのは、クジラ、イルカ、アザラシ、ジュゴンマナティなど海にすむ哺乳類の総称だ。かれらは進化の過程で海から陸上生活をするようになったのに、また海へ戻っていったそうな。私たちと同じ哺乳類。バンドウイルカの足は退化したが、小さな骨盤の痕跡は残っている。

 

本では、国立の研究博物館の研究員である著者の仕事や、ストランディングで死んでしまった海獣の解剖にまつわる苦労話とあわせて、それぞれの生き物について特徴や生息状況など教えてくれる。楽しく興味深い。

ストランディングstranding とは、イルカやクジラたちが座礁して海に戻れなくなったり、死んで漂着すること。病気か、餌の深追いか、海流移動の見誤りか、はっきりした原因の特定は難しいようだ。ときどきTVなどのニュースで見たことはあるが、日本中でこんなに頻繁にいろいろな種類で起こっているとは知らなかった。そして、現場に駆けつけて死体(巨大なクジラも!)を解剖し研究している人たちがいることも。

 

著者たちは、死体から死因や原因を探る。そして、胃などから見つかる海洋プラスチックや、プラスチック片が吸着し濃縮する残留性有機汚染物質POPsの影響に心を砕く。

 

海洋プラスチックの7割は河川から運ばれてくるというデータもあるらしい。私がぼーっとしていて風にさらわれたコンビニおにぎりの包装の切れっぱしも、川を下って海洋プラスチックとなり、愛すべき海獣たちの棲家である海を漂っているかと思うと胸が痛む。川岸に引っ掛かったペットボトル、底の砂に半分埋もれたレジ袋・・と、近所の散歩で私の視界に入ってくるものだけでもあまりにも多い。ひところ、せめて道に落ちているゴミが風で川に運ばれてしまわないように、拾えるうちに拾っておこうと思い、散歩にはゴミ袋とトングを持って出るようにしていたこともある。が、白いマスクの落とし物(ポイ捨てではないと信じたい)が多く、感染が怖くて気持ちが萎えてしまった。

 

日本は海に囲まれて、世界のクジラの約半数が近海に棲息または回遊しているそうだ。海の友人たちは思いのほか、近くにいる。しかし、「もう、私たち人類が絶滅するしか解決法はないねえ」と研究者どうしで話がでるほど、海は危機的なところに来ているようだ。一方で研究者たちは問題の突破口を見つけて他の生物と共存できる明るい未来を切り開こうとしている。

 

私にできることは、また、トングを手に取って、散歩に出かけることくらいか。

 

※そういえば、このごろ、クジラ(?)になった夢を見ていない。 

kazesoratori.hatenablog.com

 

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