夫は本日月曜日に休暇を取って、3連休だった。
3日目の今朝、ふと夫の顔を見た私は、ビックリして思わず声をあげてしまった。
「んまあ!おヒゲに白いものがこんなに!?」
髪の毛にはとうに白いものが混じっていて、年々増えているということはわかっていたのだが、ヒゲはこれまでよく見たことがなかった。聞けば、いつもは休日もだらけてしまわないように、ヒゲは剃っていたらしい。今回は食材も冷蔵庫にいっぱい入っていたし、お天気はイマイチだし、緊急事態宣言発出中だし、何しろ人に会う予定がなかったので、3日間ヒゲを剃らずにいたらしい。
すっかりオジサンになったねえ、大人になったねえ、となんとも言えない感慨で胸が一杯になった。
夫とは同じ歳で高校1年生の時、同じクラスだった。学生帽も黒い詰め襟の学生服もダブついた色白の痩せっぽちの16歳だった。
大学は別々だったが、4年生になろうかという頃、久しぶりに会った時、やはり変わらず痩せっぽちのひょろひょろだった。
どうした運命か、赤い糸がどこかに引っかかってこうなったのか、その後、結婚して33年も一緒に住んでいる。
子どもがいなくて、ずっと二人でいるので、60歳を目前にした今に至るまで、ある意味16歳の幼稚さ(?)とも言える空気をどこかに感じてきた。
だから、黒いヒゲと白いヒゲでごま塩模様の口元に、あらためて現実の時の流れを見てしまった。
でも、残念とか寂しいとかいう思いではない。よくぞ元気にここまで歩いてきたなあ、と孫の成長に目を細めるおばあちゃんのような心もちだ。もちろん孫はいないが、たぶんそんな気持ち。
あのひょろひょろくんが、仕事に就き、家を持ち、何よりも、健康で穏やかな優しい時間を日々一緒に過ごしてくれている。夫よ、ありがとね。
私の髪はダークブラウンにしているけど、染めるのをやめたらいったいどれほどの白髪だろう。ある日、染めなくなった私の頭を見て、夫も「んまあ!」と声を上げるだろうか。
それとも、今でも染めて暫く経った生え際の白髪に「オバ(ア)サンになったねえ。」と既に目を細めているのだろうか。