かぜ・そら・とりのブログ

気ままに、のんびり。

イルカ・セラピー?

長く会社員をやっていると悲喜こもごもあるものだが、辛いことも過ぎてしまうと笑い話や先輩風を吹かせるネタにして、基本的にはいわゆる社畜生活を面白がってきたクチである。

ただ、一時期、ずいぶん前のこと(20年以上前?)だが、上司とソリが合わなかった時は、自分で「いまの精神状態、ちょっとマズいな」と思った時があった。営業部門でお客さま対応に追われる上に、期末になると売上数字のフォローもあり・・と、このあたりの圧力には耐性があるが、明らかに私に対する「ご指導」だけ上司が陰湿でしつこかった。

仕事への責任感というより、「いつも明るく前向きな人」という自分のブランドの維持とプライドで、昼間はどうにか元気だったが、帰宅してからはぐったりだった(もちろん、そんなブランドは自分の勝手な思い込みなのだが)。

 

ある日、胸の苦しさや沈んでいく気分に「こりゃ、わたし、ほんとにマズいワ」と感じた。それまで学校でも会社でも仮病を使って休むなんてことはなかったのに、たまたま夫が休暇だったこともあって、「熱があるので休みます」と会社に電話をかけ、人生で初めて会社をサボってみた。

 

秋晴れで気持ちがいい日だった。夫とローカル線で海浜公園に行って体を動かし、隣の水族館にも行った。この水族館の地下のレストランが大のお気に入りなのである。ガラス越しに泳ぐイルカを眺めながら、食事やビールをいただくことができる。明るいプールをのんびり行き交うイルカたち。ひとたびショーの時間になると、尾びれを力いっぱい使って水面から空中へ姿を消したかと思えば、白く細かい泡をまとった流線型の滑らかな胴体が飛び込んでくる。イルカたちはみんな出番を楽しんでいるように見える。いつも、ずっと何時間でも、見ていたくなる。ビールの軽い酔いとイルカたちの洗練された優雅な姿に、とろけてしまいそうになる。

 

会社をサボって行ったイルカ・セラピーのおかげで「マズい」状態をどうにかやり過ごし、ソリが合わなかった上司もそのあと転勤でいなくなり、私の中では「会社、サボったぜ」と武勇伝に形を変えて落ち着くこととなった。

 

ちなみに、この時期、私を救ってくれたのはイルカたちだけではなかったことも書いておかねばなるまい。

その年の夏は、夫は連日の残業・休日出勤で見るからにお疲れモードだった一方で、私には1週間ほどの連休があった。私は、ずっと家にいて、1日中ソファに転がり、テレビのリモコンの文字盤の上を目的もなく行き来する指以外全く動かず、という状態だった。夫は、帰宅して、暗くなった部屋にそんな私を見つけても責めもせず、いつも通り嬉しそうに「ただいま〜」と穏やかだった。

今もこの時のことが忘れられないと言うと「何もしてないよ」と夫は言う。確かにそうだが、この優しい放置セラピーに救われたことは確かだ。

 

会社の仕事も家事も、無理せず、サボれる時はサボることで元気になれるものだなあとあらためて思う。

 

今週のお題「サボる」

 

にほんブログ村 ライフスタイルブログ 穏やかな暮らしへ
にほんブログ村

 

にほんブログ村 シニア日記ブログ 50歳代へ
にほんブログ村