夫は普通に家事をやってくれる。私より何かとハイレベルだ。それに、何かと気遣い、心配して私の世話もやいてくれる。自称「下男」と言いつつ。
夫が人生論など語ることはほぼない。私は自分のことは棚に上げて「もしや、なにも考えていない、つまんない人なの?」と思ったりする。
私が吠えかかり噛みつき罵詈雑言を浴びせても「この女、凶暴につき」とかつぶやいて静かに嵐が過ぎるのをまっている(北野武監督の映画タイトルをもじった?)。
ある時、ふとマザー・テレサの言葉を目にした。
Love is doing small things with great love.
大きなことはできません。小さなことを大きな愛をもって行うだけです。
夫の日々の小さな優しさのことだ!と、はっとした。great love だ!
お互いに小さな優しさで日々を重ねることが、大切なことなんだ。夫の人生哲学ってもしかしてこれなのかも? 私も一緒に優しく穏やかに暮らしていこう。そうだ!静かな小さなお城で慎ましく幸せに暮らす王子さまとお姫さまだ!
と、思ったら、もやもやしていた目の前の霧がすっかり晴れた気がした。
夫に、当たり散らしてごめんねと告げ、あなたはわたしの「王子さま」だよ!と晴れ晴れとした気分で高らかに宣言した。
夫は穏やかに微笑んだ。「士農工商の『農』だね」と。
※※※私が小学生のころ、「士農工商」は江戸時代に幕府がつくった身分制度と教科書で習った。特に苦しい生活を強いられてる農民を上から2番目において不満感を減らそうとしたという内容だったように思う。近年、実態に合わず不適切として教科書から消えているそうだ。と、少し前に知った。