かぜ・そら・とりのブログ

気ままに、のんびり。

なべて怒りもつごときかほして

何故覚えているのかわからない。高校生の時の現代国語の教科書か何かに載っていたのか。なにがトリガーなのかもわからないが、ときどき頭の中に浮上してくる歌がある。

 

遮断機に堰(せ)かれるゆふべの群衆よなべて怒りもつごとき貌(かほ)して

木俣修『冬暦』

 

この歌が私の心のどこかに初めて根を下ろしたとき、疲労感がやるせない怒りに形を変えて安まらない日々を過ごす人々に共感したのだろうか。「耳障りな遮断機の音、早く家に帰りつきたい、迷惑な踏切よ、早く開いてくれ、ああ、埃っぽい、まだか、まだか・・・」と?

 

ちょっと違うかも知れない。

 

たまたま遮断機に堰かれて「群衆」になってはいるけど、この不機嫌そうな一人一人の視線の先に家族や人生があって何か大切なものを背負っている。懸命に健気に、普通の人が普通に生きている、そのこと自体への哀愁と愛着が心にしみたのではないかしら。

そんな時間を過ごして大人になった今だから、そう思うのかな。

 

作者の木俣修さんは、昭和を代表する大歌人のひとりだそう。教科書会社の誰かがこの作者、この歌を選んで教科書に載せ、斎藤茂吉でも与謝野晶子でもなく、たまたまこの30文字程度が、40年以上心の中を漂い続けるなんて。出会いとは、いとおかし。

 

ちなみに。

記憶では「遮断機に急かれいる」だった(「堰かれゆる」のほうがとても自然な感じ)。「こんな歌、ほんとにあるのかな?」と間違えたままググったら、ちゃんと検索されて出てきたので、びっくりした。すごいなあ、グーグル!

 

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