寒い夜、工事現場の横を通りかかった。水道管の工事だろうか。重機もあったが、灯りに照らされた窪みで懸命にスコップを振るっている人を見た。その姿が尊くてありがたくて、きゅんとなった。あの人は幸せでいるだろうか。
家に帰って、ふと夫くんに問いかけた。
「世界に幸せと不幸せはどっちが多いんだろうね。」
「同じじゃないかなあ。プラスマイナスゼロ。でも何が幸せかは人によって違うけどねえ・・。」
そして続けた。
「僕は昨日、幸せがあったよ。」
「え?どんな?」
「ことりちゃん(私)がすーすー寝息をたてはじめたとき。膝が痛くて睡眠不足って言ってたから、ちゃんと寝ついたみたいねって思って。」
こんな些細なことに夫くんは幸せを感じていたのか。
更に続きがあった。
「そのあと、ぐおーっ、ぴゅー、スー、ひゅーって言い始めて、いったいどこからこの音、鳴っとるやろって感じで、眠れんやった。」
・・・私の盛大なイビキで眠れなかったとな。
つまり、その夜の夫くんの幸せも「プラスマイナスゼロ」だったみたい。