かぜ・そら・とりのブログ

気ままに、のんびり。

オートバイ

大学卒業間近の頃、オートバイの中型免許を取った。

会社に入って初めてのボーナス、これは寸志と言う形で支給された50,000円であったが、これを使ってヤマハのSRX250Fを買った。排気量250cc、 DOHC単気筒エンジン、スリムなタンクにヤマハの音叉マーク、ハーフカウルが付いた真っ赤なモデル。

一度、有料道路の料金所のおじさんに止められた。大柄な私が跨ると原付に見えたらしい。近くの海岸線や田んぼの中の田舎道、少し遠出して林の中の国道を一人でのんびり走るのが好きだった。

 

片岡義男の本を片っ端から読んだ。物語に登場するカッコいい女の人みたくヘルメットを取った時、頭を振って長い髪を揺らすことに憧れて、ストレートパーマまでかけた。残念ながら私のくせ毛はパーマ液を持ってしても、さらりとしたロングヘアには程遠く、夢は叶わずじまいとなった。

 

夫と結婚するまでは150キロほど離れて住んでいたので、休日にはそれぞれのオートバイで予め決めておいた所で待ち合わせ、それから1日、一緒にツーリングを楽しみ、そしてそれぞれの家に戻っていた。猛暑でも、雨での日でも、寒くてどうしようもなくても、楽しくてしようがなかった。

 

私のSRXは数少ない私の嫁入り道具のひとつとなり、一緒に夫のいる街やってきた。結婚して暫くは、2台で家からツーリングに出かけていた。が、何かが違う。独身の頃と同じように1日中大好きなオートバイに乗って、家に戻ってきたときに「ああ、楽しかった!」ではなくて「ああ、無事に戻って来られてよかった!」と思っていることに気が付いた。失いたくないもの、壊れてほしくないことが増えすぎて、オートバイを心から楽しめる時代が終わったのだと思った。

 

その後、夫は通勤に使っていたけど、私はぱったりと乗らなくなり、やがて家を買って引っ越した時に2台とも手放した。夫のFZR250は私の弟へ、私のSRXはある晴れた昼下がり、引き取りに来たトラックに乗せられて行ってしまった。ドナ ドナ ドナ ドナと、市場へ向かう子牛みたいに。ごめんね、ありがとう、さよなら、SRX。さよなら、私の青春。

 

今、車を持ち、どこかに出かけるときは専ら夫が運転する。助手席に座ってドライブに行っても今一つ高揚感がないのは自分でオートバイを走らせる楽しさが忘れられないからかもしれない。

少し前、夫が屋根が開くタイプの中古車を買った。納車の日は、少し肌寒さが残ってはいたがお天気がいい日で、早速、私を横に乗せ屋根を開けて小ドライブすると夫は嬉しそうに言った。

「ふたりでツーリングしてるみたいだね」

 たしかに、直接降り注ぐ日差しや風の匂いが、オートバイのそれに似ていた。

 

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