なぜかふと、どうでも良いことを思い出した。
今から50年も昔、中学2年生の頃の教室での出来事だ。
誰かとのおしゃべりの中で「NちゃんはTくんと付き合っているんだって」と聞いた。たぶん、そのとき、私は「えええ?!」などと声を上げたに違いない。「付き合う」って、どーゆーことなのかよく理解できてもいないけど、あの女子とあの男子が、中学生なりのそーゆー関係で、これはかなり大人の話題だわ!と、さっきまで子どもそのものだった私にもただならぬ状況を少しは理解することはできた。
Nちゃんはいつも長い髪を頭の後ろで一つに括っていた。浅黒い肌にそばかすいっぱいの目立たない子だった。「Tくんと付き合っているんだって」に驚いて、私が教室の真ん中あたりにいたNちゃんを見やったとき、彼女は顔だけこっちを向いていた。その時の彼女は髪を結んでおらず、長い髪を下ろしていた。そして私を大きな瞳で見て、微笑んだ。
あの時のNちゃんの微笑み・・・・。「ふふっ」と秘密を持つことを許された大人が子どもを見るような、勝者が敗者を見るような。指で髪を耳にかけるゆっく りとした所作には色香も漂い・・・。この瞬間、私には、Nちゃんがもう浅黒い肌のあか抜けない子どもではなくなって、南沙織的な素敵大人女性に見えたのだった(私の記憶の中では)。
ちなみに、Tくんは小柄だけどちょっとイケメン顔で、席が近かった私によく話しかけてくるナイスガイ(13-14歳の少年であるが)だった。Nちゃんと付き合っていることを聞いた瞬間、実は「え?私じゃなくて?」と勝手に驚いたことも、思い出した。
自分に気があると思っていた男が昨日まであか抜けなかった女になびいたことを知った衝撃、そして、男ができた途端、輝きを増し色気を纏う女の眩しさへの動揺・・・要約するとこんな感じの想い出話、ってことかな、大人的には。