夫は技術者である。30数年勤めた会社をちょっと早めに退職して、現在は再就職先で嘱託社員として毎日フルタイムで働いている。
もといた会社でやってきた専門技術を活かした再就職なので、本人もまずまず納得している様子だ。日々、外部からのお客様をお迎えして技術的なサポートをやっている(?らしい)。
ときどき、元気にお仕事してるかなあと思って「今日のお仕事、どーだったあ?」と聞いてみたりする。企業機密的に当たり障りのない話に混じって、先日は「トイレのペーパータオルが無くなりそうだったので補充した」とのこと。よくある事らしい。更に「ときどき石鹸液が無いときは入れてるよ」と。
トイレの掃除や備品の補充をやってくださる業者さんはいらっしゃるらしい。が、夫はトイレに行ったとき、ペーパータオルや石鹸液の残量が少ないことに気づいて(家でもそうするように)、保管場所から予備を出してセットしているんだろうなあ。忙しくても、いつものように、次に使う人のことを思って、ごく自然にそうしているんだろうなあ。
「偉いなあ」と感心すると「たかが紙、されど紙さ」。トイレのペーパータオルがちゃんと補充されていることはお客さまからの信頼につながる、と考えているらしい。
うーむ。夫は歴史に名を刻むでもなく、お家柄がよろしいわけでもなく、社会的な地位が高いわけでもない。でも、ひとりひっそり黙々と(家でもそうだけど)doing small things。こんなとこ、実はとっても尊敬している。
アドラー心理学のことを思い出した。「ゴミが落ちていたら拾ってゴミ箱に捨てるのが正しいとわかっていても、賞罰教育を受けて承認欲求を持つようになった子供は、拾ったところで誰にもほめられないのなら、拾わなくてもいいと思ってしまう」。私自身は、ともするとパフォーマンスやりがちなこっちの人間だなあと思う。
ちなみに夫は、朝からお客さまのお昼のお弁当の注文もとるそうだ。「これ、大事」と言っていた。専門と違った分野でも、いろいろ元気に活躍してるなあ。
でも、どんなにイイ事をしていても褒めてはならないのだ。アドラー先生によると。